soi saudade ー旅して感じることー

soi saudade
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ー旅に出る理由って、こういうことかもしれない。

soi=路地、道、通り、 
saudade=郷愁、哀愁、孤愁、回想、憧憬、思慕、

遠く離れた事物や人、あるいはもう存在しない人やものに対して、
再び会いたいという欲求をともなった憧れ。


Sunset in Bali
 たとえば、どこの町だったか、夕暮れ時にバス乗り場でバスを待っていると、となりに、夕飯の買い出しだろうか、小さな体に大荷物を両手に下げた、おばぁちゃんが座った。

いつ来るのかわからないバスを、ふたりで待つ。

 現地の言葉で、なにやら話しかけてくるおばぁちゃん。「ごめんなさい。わからない」身振り手振りで答えると、そうかそうかと照れくさそうに歯を出し笑う。その顔がとても素敵だなと思う。

 暇を持て余したおばぁちゃんが、買い物した食材を地面に並べ何やら話しかけてくる。今日の夕食の献立を説明してるのかな。バスが来なくて退屈なんだろう。言葉なんて関係なく話しかけてくるその姿に、意味も分からず、うんうんと応えてると、不思議となにか通じ合う。そして、おそらく毎日こうしてバスを待つ、おばぁちゃんの日常に触れることが出来た気がして、とても心地よい。
行き交う車やバイクの大騒音に、人々の話し声笑い声。騒がしいはずのその夕方の風景は、ゆったりと流れるぬるい風のおかげか、とても静かで、はじめて見る風景なのになぜかとても懐かしい。

Children in Cambodia やがて大きなエンジン音をあげてバスがやってきた。
車内には、買い出し帰りの主婦におしゃべりに夢中な女学生たち。顔を寄せ合う仲の良いカップルに、仕事帰りの誇らしげな男たち。それぞれがそれぞれの家路に向かう。それぞれにとっては何も変わらない日常の風景は、旅人にとってどんな観光地よりも魅力的で、居心地が良い。その雰囲気にとけ込む自分を感じながら、窓の外を流れる景色を眺める。激しく上下左右に揺られながら。

 ひとり、またひとりとバスが停まり、乗客がバスを降りていく。窓からその人の帰り路を目で追いつつ、普段なら考えもしないその人たちの生活や、そのバックグラウンドに思いを馳せてみる。今なら少しは想像出来そうだ。やがて、隣に並んで一緒にバスを待ったおばぁちゃんが、名もなきバス停でバスを降りる。いつものように運転手になにやら一声掛け、いつものように大荷物を両手にぶらさげて、どこに家があるのか森とも言える方向に、ゆっくり歩いていく。その後ろ姿を目で追いながらもう二度と、会うことはないんだろうなと思う。

 陽が落ちだして、知り合いのいなくなった車内に、なんとも言えない寂しさを感じだす。バスが停まるたびに乗客が、ひとり、またひとりと、運転手になにやらひとこと声をかけ、帰るべき場所に帰っていく。賑やかで、鮮やかだった空間が遠いむかしのように感じ、モノクロのがらんとした車内に、寂しさを通りこし不安な気持ちがわき起こる。心臓の鼓動がすこし高鳴るのが自分でも分かる。

大きな音を立てて、土埃をあげながら走るこのバスは、どこに向かっているのだろうか。

この先にどんな景色が広がり、なにが待っているのだろうか。膝もとで広げていたガイドブックを、そっと閉じる。不安な気持ちとともに、眠っていた好奇心が呼び起こされる。

うまく言えないけど、旅ってなんかこんな感じ。うまく伝えることが出来るかな。

(goo/09.07.22)


Plane Of Jars


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